70人の胃袋を満たすため。ハヤシライス+ジャーマンポテト+コンソメスープをコンロ3口で仕上げた日の記録。

はじめまして。毎日70人分の食事をつくっているらんぷです。このブログでは、大量調理の現場で培ったリアルな段取り術と、家庭でもすぐ使えるアイデアをお届けします。第1回は、コンロが足りない中でランチを仕上げた「熱源パズル」の日。どうぞ最後まで読んでいってください。

本日の献立

今日のメニューはこちらの3品。ボリュームもあり、それぞれ加熱工程が異なるので、段取りの組み方が勝負です。

一見シンプルに見えますが、70人分となると話は別です。じゃがいもだけで何十個も使いますし、ハヤシライスのルウを溶かしながらスープも管理する、という状況は「熱源が常に満席」になりがちです。


「コンロが足りない!」をどう解決したか

今日の設備はコンロ3口+オーブン。4品の加熱が必要なのに口数が足りないとき、どう考えるか。答えは「オーブンを第4のコンロにする」です。

ジャーマンポテトのじゃがいもは、コンロで炒めながら火を通すと鍋をずっと占領します。でもカットしたじゃがいもに油と塩をまぶしてオーブンへ投入するだけで、コンロを空けながら均一に火を入れることができます。

オーブンが動いている間、自分はハヤシライスとスープに集中できる。これが「段取りの勝ち」です。家庭でも、コンロが1口しか空いていないとき、このやり方は十分使えます。


大量調理だからこそ美味しいハヤシライスの秘訣

実は、ハヤシライスは少量より大量のほうが旨みが出やすい料理です。その理由と、現場でやっているコクの出し方をご紹介します。

70人分の大鍋でじっくり煮込むと、食材の旨みが溶け出して深みが増します。少量調理では出しにくい「給食の味」の正体は、この時間と量の力だと思っています。


プロの調理工程① — ハヤシライス

70人分のハヤシライスは、玉ねぎの炒め方からルウの扱いまで、「量が多いからこそ丁寧に」が鉄則です。

玉ねぎの量分けて炒める回数ルウを溶かし後の時間
20kg3回15〜20分

ステップ1 — 玉ねぎを「量の敵」にしない炒め方

大量の玉ねぎを一度に鍋に投入すると、水分が大量に出て蒸し煮になってしまいます。飴色に近づけるコツは「分けて炒める・強火で水分を逃がす」です。

  • 1鍋の容量の1/3ずつ投入。一度に全量を入れない。焦げ目を気にしながら強火で炒め、水分を積極的に飛ばす。
  • 2最初の玉ねぎがしんなりしたら次のバッチを加える。すでに炒めた分が水分を吸収する役割を果たし、後のロットが早く炒まる。
  • 3全量を合わせた後、鍋底が見えるくらい炒まったら肉を追加。この段階で完全な飴色でなくても良い。煮込みで補完できる。

完全な飴色を目指すのは時間がかかりすぎます。「7割まで炒めたら煮込みに任せる」という割り切りがプロの時短です。

ステップ2 — 70人分のルウをダマにせず溶かすテクニック

  • 1火を止めるが最重要。沸騰状態でルウを入れると鍋底で焦げ、表面だけが溶けてダマの原因になる。必ず火を止めてから投入。
  • 2ルウは細かく割ってから入れる。大きいまま投入すると中心が溶けるまでに外側が焦げる。手で割るだけでOK。
  • 3大きなへらで「鍋底を切るように」かき混ぜながら溶かす。円を描くより直線で底をすくう動きのほうがダマが崩れやすい。
  • 4全量が溶けたことを確認してから弱火〜中火で再加熱。この「確認してから点火」が失敗を防ぐ一番のポイント。

ルウを溶かした後は焦げやすい。再加熱後は最低でも2分おきに底からかき混ぜ続けること。特に大鍋では鍋底中央が高温になりやすい。

ステップ3 — 時間が限られた中でコクを最大化する隠し味と工夫

  • ▸トマトペースト 大さじ3〜4(70人分)炒め工程の後半に加えて焦がし気味に炒めると、トマトの酸味が飛んで旨みだけが残る「ソフリット効果」が生まれる。
  • ▸ウスターソース 大さじ2スパイスと酸味が複雑さをプラス。ルウ投入と同時に加えることで、馴染みが早い。
  • ▸バター 30〜40g(仕上げ)火を止める直前に加えると艶とコクが出る。溶かすだけでOK。加熱しすぎると逆効果。
  • ▸塩で最終調整ルウには塩分があるため、最後に味見してから足す。一度に多く入れず、小さじ1/2ずつ確認する。

プロの調理工程② — ジャーマンポテト(オーブン活用)

「コンロを使わずじゃがいもに火を入れる」というオーブン活用のポイントは、下処理の精度にあります。均一な仕上がりは、切り方と天板の並べ方で8割が決まります。

ステップ1 — 下処理:切り方と厚みのポイント

  • 1一口大(3〜4cm角)に切り揃える。厚みを1.5〜2cm以内に統一することが最重要。厚みがバラバラだと薄い部分が焦げる前に厚い部分が生のまま。
  • 2切ったじゃがいもは水にさらさない。表面のでんぷんが残ることで、オーブンでカリッと仕上がりやすくなる。水にさらすとベタつきやすい。
  • 3油(サラダ油またはオリーブ油)・塩・こしょうをボウルで全体にまぶす。油の量はじゃがいも全量の約5%が目安(1kgに対し大さじ3程度)。

ステップ2 — 天板への並べ方と火の通りを均一にするコツ

  • 1重ならないよう1層で並べるのが絶対条件。重なった部分は蒸し状態になり柔らかくなってしまう。天板が足りなければ2枚に分けること。
  • 2オーブン内での位置は中段が基本。上段は表面だけ焦げやすく、下段は底面が先に焦げる。中段を基準に、途中で天板の前後を入れ替えると均一に仕上がる。
  • 3温度は200〜210℃、20〜25分が目安。残り5分になったらオーブンを開け竹串で確認。スッと入れば完成。硬ければ5分追加。
  • 4オーブンから出したらすぐにコンロへ移さない。天板の上で1〜2分置くと余熱でさらに火が通り、表面も落ち着く。

大量調理では「全部が完璧な焼き色」は難しい。天板の端と中央で焼き色に差が出ても、仕上げの炒めでカバーできます。こだわりすぎず、火の通りを優先して。

ステップ3 — コンロ仕上げ:ベチャッとさせないための炒め方

  • 1フライパン(または回転釜)をしっかり熱してからベーコン→玉ねぎの順で炒める。水分が出る前に表面を焼き固めるイメージ。
  • 2じゃがいもを加えたらあまりさわらない。触りすぎると崩れ、でんぷんが出てベタつく。30〜40秒おきにひっくり返す程度でOK。
  • 3味付けは塩・こしょうのみが鉄則。醤油やソースを加えると水分が出てベチャッとしやすい。シンプルに仕上げたほうが食感が保たれる。
  • 4仕上げにパセリを散らす場合は火を止めてから。余熱で十分香りが立つ。加熱すると色が悪くなる。

全体のタイムスケジュール — 提供時間から逆算する

12:00提供を目標に設定した場合の動き方です。「何かを待っている時間をゼロにする」がプロの段取りの核心です。

まとめ:限られた環境で最高の味を出す喜び

コンロが3口しかない。でも3品出さなければならない。そういうとき、制約はストレスではなく「パズルを解く楽しさ」に変わります。

今日のポイントをまとめると、オーブンを「第4の熱源」として使いコンロを解放すること、ハヤシライスは玉ねぎの炒め・ルウの扱い・トマトの酸味の3点でコクが決まること、そして段取りは「何を先に動かすか」を最初に考えることで、仕上がりの質が変わるということです。

給食や施設調理の現場では、毎日こういった「小さな工夫の積み重ね」があります。このブログを通じて、その知恵を少しずつ共有できたら嬉しいです。

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